『サハラの幻影』

砂漠で生きる情報屋。
旅人たちの間で「彼の情報は金よりも価値がある」と囁かれていた。

噂によれば、どんな秘密も探り出す能力を持っているという。
どこからともなく現れては、気まぐれに必要な情報を掌中に踊らせ闇へ溶ける。


熱風が砂粒を舞い上げる中、少女は奇妙な青年と出会う。
彼の身のこなしは風のように軽やかで、風貌は砂漠の酷暑を忘れさせる涼しさがあった。

少女は青年に導かれるように、路地裏の小さな雑貨店へ足を踏み入れる。
店内は古びた地図から珍しい宝石まで様々な品が並び、時が止まったかのような静寂が漂っていた。

「────君は何を求む？……失せ物をご所望なら、私についてくるといい。」

ベールに包まれた青年は優しげにそう告げると、蠱惑的な微笑を浮かべ、少女を誘うのだった────。


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