法話:真の自己に目覚める
須磨寺小池陽人の随想録 須磨寺小池陽人の随想録
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 Published On Aug 4, 2020

法話:小池陽人の随想録 ~ 真の自己に目覚める ~

先日、昔からの知り合いが私に会いに須磨寺まで来てくれました。

四年以上会っていなかったのですが、前の週に突然連絡があり、来週どうしても会いたいというのです。理由を聞くと、仕事の悩みから、うつ病が再発してしまったとのこと。彼は、数年前にも仕事と家庭のことで、うつ病になってしまったことがありました。

まじめで、責任感が強く、優しい、いわゆる「いいやつ」なのですが、それゆえに、自分で全て抱えこみ、我慢してしまう彼の性格が原因でうつ病になってしまったような気がしていました。

彼は、接骨院の院長をしています。その接骨院に七十代の女性が毎日通って来られていたそうです。その女性は、いわゆるクレーマーで、他の施術師では対応が難しかったので、院長である彼がその方を担当することになりました。その女性は、彼の施術や人柄を大変気に入り、当初は問題が解決したかにみえました。ところが、それが彼への執着となり、他の方の施術に移動すると、それだけで怒るようになったのだそうです。

それは、エスカレートしていき、他の方の前で大きな声で暴言をはかれたり、罵倒されたりすることが、毎日のように続きました。他の患者さんに、迷惑はかけられない。他の施術師には、頼れない。雇い主であるオーナーに相談しても、「君の力でなんとかしなさい」と言われてしまう。まさに誰にも頼ることができない状況が続き、職場に行くことが辛くなり、心療内科を受診。先生に「最低でも二か月は、仕事を休みなさい」と言われてしまいました。

私は彼の話を聞くことしかできず、何もできないまま、見送りました。帰った後も、もやもやとした気持ちだけが続きました。そして、その女性に怒りが湧いてきました。その人は、今も毎日、それまで通り、接骨院に通っているそうです。かたや、彼は仕事にいけなくなるほど、苦しみの中にある。その不条理な事実を、簡単に受け入れることができませんでした。

そのような時に、たまたまNHKのEテレ「100分で名著」という番組で「法華経」について取り上げているものを見ました。第二回目のテーマは、「真の自己に目覚めよ」でした。ブッダとは「目覚めた人」という意味であり、成仏とは「真の自己に目覚めること」を指しているのです。そして、法華経では、どのような人でも、例外なく仏性を宿していると伝えます。

つまり、誰でも「真の自己に目覚める」可能性を持っていると伝えているのです。番組の指南役の先生は、学生時代、うつ病だった時に、この法華経の教えに出会ったとおっしゃっていました。

「人は鏡の前に立った時に、鏡にはありのままの姿が映っているけれども、我々はそれをありのままに見ていない」という言葉と出会い、まさに自分のことを言っていると感じたそうです。

それまで、「あの人は私をどうみているのか」ということを常に考えながら行動してきた。そうすると、その人に気に入られる為に、自分を捨てて隷属するような生き方になってしまう。本来の自分と誰かに見られている自分とにずれが生じて、それが、生き辛さとなってあらわれ、うつ病になってしまったそうです。「真の自己に目覚める」ことの大切さを説く仏教の教えに出会ったことで、そのうつ病を乗り越えることができたのだそうです。

法華経の中で、釈尊は、弟子たちを深く信じ、温かく見守っています。その教えは、自分を信じる勇気を与えて下さるように私は感じました。

この番組を見て、彼の苦しみも、先ほどの先生の悩みと近いのかもしれないと感じました。人は、誰でも誰かに認められたいという欲求をもっています。もちろん私も持っています。しかし、その欲求は、時として、「真の自己」を見つめることを邪魔してしまうことがあるのではないでしょうか。

私も「立派にみられたい」、「いつも明るい人にみられたい」など、様々な欲求に支配されることがあります。もしかしたら彼も「立派な頼られる院長としてみられたい」という思いがあり、それが苦しみを生んでいたのではないかと思うのです。そうであれば、その七十代の女性が来なくなっても、問題は根本的に解決しません。怨憎会苦という言葉が示すように、この先も対応の難しい人には必ず出会うからです。

何よりも今の彼には、ゆっくり身体を休めることが大切だと思いますし、仕事ではなく、自分のことを一番に考えてほしいと思い、番組を見た後、そのようなことを伝えました。そして、必ずや良き方向にいくことを信じ、微力ながら須磨寺から祈りを続けていこうと思っています。

私たちは、苦しみを抱えた時、「こう見られたい」という思いに囚われていることが少なくないのではないでしょうか。そのような時は、「真の自己に目覚める」という言葉を思い出していただきたいと思います。「真の自己」それは、善悪や成否、意味の有無などというような尺度では、絶対に見えてこないものだと思います。良いも悪いもない、ありのままの自分を見つめるということなのです。そして、そのありのままの自分のことを信じ、大切にしていく教えが仏教なのだと思います。

【毎月、須磨寺にて法話をさせて頂いております】
毎月18日の10時からの護摩祈祷と写経会、20日と21日は11時半から奥の院にて、そして、21日は14時から護摩祈祷をさせて頂き、法話をさせて頂いております。

【須磨寺オフィシャルサイト】
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■楽曲提供:小馬崎達也
Official site:http://www.mt8.ne.jp/~pangaea/
Youtube Channnel:   / pangaeamusicfarm  

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