アオサ
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 Published On Sep 2, 2014

GAIAPRESSは、大自然の不思議なもの、科学的ではないとされるもの、無視されてきたものに、もう一度、光を当て、新たな科学の視座を見出していきたいと考えています。
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日本各地の海岸で、ごく普通に目にする緑色の海藻、アオサ。
アオサ属は十一種に分類されるが、春から秋にかけて繁殖し、よく目立つのがこのアナアオサである。
構造は極めて単純であり、ほぼ同じ大きさの細胞を敷き詰めた膜が、二重に重ねられたような形態を示す。
いかにも原始的な植物という印象を受けるが、アオサには、環境を読み取る不思議な力が秘められているのだ。

アナアオサは水温が二十度近くに上昇すると、外周部分から順に細胞分裂し、遊走子という細胞を放つ。
遊走子は四本の鞭毛を持ち、光を避けるように遊泳し、岩や砂地に固着してクローン株を作る。
遊走子を放出した個体は、透明な細胞壁のみが残ったフィルム状になり、やがて枯死する。

同じ時期、外周部がやや黄色くなった個体を見かけることもある。
このような個体は、鞭毛が二本しかない配偶子という細胞を放出する。
配偶子は光を求めるように表層を漂い、二つの配偶子が受精することで新たな世代を形成するのだ。

観察記録によれば、配偶子の放出は、五月の満月の三日前にピークを迎える。
月明かりも利用して、他の配偶子と出会うチャンスを増やしているのだと想像できるが、アオサは何で満月の時期を計っているのだろうか。

また、ある個体が遊走子を放出するのか、配偶子を放出するのかは、顕微鏡で観察しても全く区別が付かない。
更に、固着する場所も、岩の割れ目や砂地など多彩であるが、どうやって根を張るのかもよく判っていない。
いったい何処にセンサがあるのかと不思議に感じるがアオサの謎はこれだけではない。

夏の海岸に打ち寄せられた、大量のアオサ。
打ち上げられたアオサは一晩で枯死し、悪臭を放つことから「グリーン・タイド」と呼ばれ、環境問題として扱われることも多い。
グリーン・タイドは、海水の垂直循環が乏しくなることで富栄養化が進行し、アオサが異常繁殖するために発生すると考えられている。
しかし、海水の垂直循環が最も盛んな梅雨明け頃には既にグリーン・タイドが発生していることも多い。

また、グリーン・タイドとなるアオサは、ほとんどが遊走子も配偶子も放出しない、不稔性であることが知られている。
これはとても奇妙な現象であり、岩や砂地に固着しているアオサが増殖するのではなく、固着できずに漂流した個体が余分な栄養塩を吸収し、海水の富栄養化を予防しているかに見える。

岩にも砂地にも固着できず、漂流した個体が不稔性化するメカニズムも不明だが、もしかしたら、夏の富栄養化を予防するために、五月の段階で一定数の不稔性体を生産しているのかも知れない。
何れにしても、アオサの繁殖には何らかのメカニズムが隠されているようなのだが、何処にセンシング能力が秘められているのか、未だ定かでは無い。

人間にはこれほどまでに環境を計るセンサは無い。
しかし人類には分析力という種を越えた力がある。
その分析力で地球の姿を計ること、それこそが人類に与えられた使命といえるだろう。

ハイテクの一歩先にいつも堀場製作所

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