Published On Mar 11, 2021
#認知症 #認知症カフェ #名古屋大学
研究報告では、認知症の人本人と家族が認知症カフェに参加する前と定着した後で、家族が期待する認知症カフェの役割に変化が生じると考察している。
参加する前の家族は、本人の認知機能、身体機能の向上を願い、そして介護知識や技術、情報を獲得する場であることを望む。しかし、定着後は本人にとって安息の場となり、家族にとっては自己肯定の場に変わる。
本人の抱える不安や悔しさは、たとえ家族であっても本当のところはわからない。
「なんで私だけがこんな目に遭わなきゃならないの。」不安な毎日が自己否定を強くする。そして、「私の苦しみや悔しさを誰もわかってくれない。」と他者攻撃を引き起こす。認知症カフェでは、同じ病気の当事者同士が出会い、分かり合える嬉しさを味わい、ともに交流し活動に参加して刺激を受ける。その経験が「今のままでいいんだ。」と安堵感を高めていく。
介護の大変さは言葉では言い尽くせない。
「なんで私だけがこんな目に遭わなきゃならないの。」先を見通せない不安な毎日が自己否定を強くする。そして、「あいつなんかいなくなればいいのに。」と他者攻撃を引き起こす。認知症カフェはピアの力でこの悪循環に楔を打ち、「今のままでいいんだ。」と自己肯定感を高めていく。
また、本人同士が交流し、活動に参加している姿や、自宅では見せない表情に出会うことで、出会い直しが始まり、お互いに認め合える関係が再構築される。
なごや認知症カフェへの登録要件は、認知症の人が住み慣れた地域で自立した生活ができるよう、①本人同士の仲間づくりや生きがい支援、②介護する家族の負担軽減、③認知症症状の悪化予防、④地域住民への啓発、等を目的とし、誰もが自由に集まり、楽しく過ごせる場としています。
多くの認知症カフェでは、この研究報告で明らかにした参加する以前のニーズに着目し、運動やレクリエーションなどのプログラムや、介護技術やサービスの情報提供を中心にした運営が行われています。
しかし、認知症カフェに参加し続けている真の理由は、プログラムや情報提供の内容ではなく、本人と家族にとって安穏、安息の場であり、自己肯定の場になっているからです。
認知症カフェ運営者の皆様には、ニーズの変化をキャッチし、もう一度、認知症カフェの在り方を検討する機会にしていただければ幸いです。